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The Novelty Kingdom
原作:TRUE VILLAGE
作画:ISSEI
サンライズ王国
"目新しき国(ノベルティ・キングダム)"
かつて繁栄を極めたサンライズ帝国が3カ国に分裂した内の一国。古き良き伝統と文化を持ち、前身である帝国より受け継いだ「サンライズ」の名に恥じぬ存在感を放っている。
科学や機械工業が浸透しつつあるエルデ地方では珍しく、職人たちによる美術品や日用品をはじめとした手工芸品の生産が国の財政を支えている。その芸術性は日々進歩するため今日のエルデ地方においても衰退の色を見せることはない。王都デイブレイクでは王家の祭日を除いて、ほぼ毎日マーケットが開かれる。装飾品から実用品まで、職人たちの業が光る作品たちが所狭しと屋台に並ぶ姿は圧巻の一言に尽きる。
サンライズ王国はエルデ地方で唯一「永世中立国」宣言をしており、王国の治安維持と外国による侵略阻止に努める軍事機関「チゼル騎士団」によって護られている。
王家はサンライズ帝国期から絶えず続いてきた由緒ある家系で、生まれてくる者たちは皆、他を圧倒する剣術のセンスと無限大ともいわれる膨大な魔力を生まれつき持っているとされ、それらは帝国の父とされる伝説の英雄王より名をとって「ソレイユ体質」と呼ばれる。類稀なる才能と王国を率いるカリスマ性はまるで英雄王が生まれ変わり続けているかのように歴代の王たちに代々受け継がれ、国の栄光を守ってきた。
現在は『フリードリヒ=フォン=サンライズ』国王が国を治めているが王位継承者は未定となっており、恐らくソレイユ体質を持つ王族の間で継承者争いが起こっている可能性がある。
「国王に隠し子がいる」「アンスール帝国に習って第一王女『ヴィルヘルミーネ』が王国初の女王となる」など噂は様々だが、第一王子『フェルディナント』が次代国王の座に就く説が最も有力とされている。
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アハズ王国
"大規模地下要塞都市国家"
数百年前に起きた戦争によって草木の一切生えない不毛の地と化したアハズ地域の環境に順応するため、民によって築かれた地下都市がサンライズ帝国分裂と共に独立した王国。後述の理由から世界中から著名な芸術家が訪れやすい国である。
地下水を汲み上げる井戸を空気穴としても利用し、地上から一直線に開いた穴から入り込む太陽光を水の反射で都市の内部まで行き渡らせたり、と地下都市には気候や地形に合わせた様々な工夫がされている。
初めてこの王国を訪れる者に忠告しておくが都市は迷路のように脇道が多く入り組んでいるので地図は全くと言っていいほど役に立たない。注意されたし。アハズ国民は人懐っこく愛想の良い性格をしている者が多いので、彼らと仲良くなり案内してもらうのも手である。
まるで異世界のような建築物とその景色の美しさには定評があり、「王国都市の全てが巨大な芸術品である」と言われるほど。特に王都モーントの街並みにおいてその芸術性はエルデ地方だけでなく世界中からの評価も高い。
作品に実用性と美しさの両方を求めたというサンライズ帝国の国民性を今もその景色に残している証拠である。
タフト王国
"希望満ち溢れる至福の王国"
タフト王国はエルデ地方で最も安全で完璧で幸福な王国です。王国民は皆、親愛なる友人にして完璧な偉大なる女王陛下「ハル=モニア」様のお力によって守られています。王国騎士団は女王陛下のご命令の元、王国の平和を脅かす不幸な反逆者たちを退治するために日夜働くので王国民は毎日例えようも無く幸福で希望に満ち溢れた生活を送ることができるのです。
善良で幸福な王国民の皆さん、タフト王国は外部の絶望的な戦禍や天災とは無縁な平和と慈愛に満ちている最高の王国であり、このような王国で女王陛下の庇護と恩恵を受けることは幸福に他なりません。女王陛下への奉仕は最高の幸福であり、幸福は王国民の当然の義務なのです。
しかしここ最近、一見幸福そうな顔をしていますが 心の中では女王陛下の統治に不満を持つ、幸福でない反逆者たちが増加していることが判明しました。階級をわきまえない反逆者が、今日も情報統制階級(セキュリティ・クリアランス)を違反し不法に情報を得ているのです。女王陛下の敵となる反逆者たちが機会を窺ってひそかに反逆の計画を練っています。それだけではありません。旅人を装って数多の密偵が女王陛下を打倒しようと狙っているのです。反逆者確保の協力を持ちかける王国民が、隙あらばあなたを反逆者に仕立て上げようと企んでいます。
残念ながら、タフト王国は今日も反逆的兆候にまみれています。いないということはありえません。反逆者は常にどこかにいるのです。
また、これらの反逆的兆候を見逃すことも、また等しく反逆です。 しかし王国民の皆さん、心配は無用です。女王陛下は善良な王国民の味方なのですから。
王国民よ、あなたは幸福ですか?
ジュリエーザ共和国
"鉄と霧の国" "インジーニアシュタット"
サンライズ王国の西隣に位置する、専制統治者を持たずに議会を開くことで政治を行うエルデ地方で唯一の「共和国」。"鉄の魚が空を飛び、鉄の龍が地を駆ける"首都「オールド・メント」は、まるで異世界のような光景を一目見ようと訪れる旅人や貴族、技術を吸収しようと励む学生たちとそれを伝授する技術者・発明家で溢れかえるエルデ地方指折りの大都市となっている。
そこかしこより湧き出る温泉など地熱に恵まれた環境を生かしアンスール帝国からもたらされた蒸気機関を短期間で急激に発展させ、ほんの十数年前まで過疎化が進行していた国とは思えない程の活気を取り戻した。競争意識の高いジュリエーザの国民性からか、国中には優れた発明家たちの構える研究所(ラボ)が点在し、お互いの技術を切磋琢磨している。その鉄菅(パイプ)の張り巡らされた工業地帯より吐き出される大量の蒸気が国中を覆い尽くしている街並みの姿から"霧の国"と呼ばれており、最も霧が濃いとされるオールド・メントに至ると日によっては数十センチ先の視界の先ですら見ることが困難になってしまうというが、1日に2度ほど霧を晴らすために巨大な風を起こす装置が稼働するので余り心配は要らない…らしい。
十数年前よりアンスール帝国と技術提携を結んだ事で開発された機械亜人(アンドロイド)が街を歩き回る風景が浸透していたが、機械亜人たちに突如「感情」が生まれるという異常事態が発生、人間に使役されるだけという自分たちの存在意義に疑問と不満を持った機械亜人たちが革命を起こした。これに対し、議会の多数を占めていた機械亜人撲滅派は機械亜人と同等の力を持つ改造人間、即ち機械奇人(サイボーグ)を開発し、対機械亜人兵器として送り込む。しかし事態が収束する見込みは得られなかったため、政府は国の汚点を白紙化、歴史から抹消することを決定した。そして5年前、政府は穏健派の猛反対を抑えつけ機械人殲滅令を発布。発布からたった2年の間に機械亜人約32万・機械奇人約15万の全個体を破壊、部品は溶解・再成形され新たな建造物の鉄骨や歯車として再利用されることとなった。
アンスール帝国
"大魔導主義帝国"
エルデ地方のおよそ3分の1を占める領土と大規模な軍隊を有する、現在のエルデ地方で最大の国力を持つと推測される大帝国。
領土の広さの割には得られる魔法資源があまりにも少ないため、国のライフラインを支える魔法産業には多くの奴隷、魔導師でない人間が生まれつき体に持っている魔力を搾取することでそのエネルギーを賄ってきた。そのため代々統治してきた歴代皇帝の圧政もあってかただ搾取されるだけの側である国民の怒りは増す一方で、王家に対する支持率も非常に低く、国の治安も現状とても悪い。
しかし十数年前、前皇帝『リア』が大規模な産業改革の実施を発表。人の命にも近い魔力を搾取する魔法ではなく、魔法よりコストが高いものの場合によっては魔法よりも膨大なエネルギーを生み出せるという「科学」を産業に取り入れることで腐敗した国家を立て直すと宣言した。その影響で今日の帝国には魔法と科学の混在した施設が多く存在する。
3年前に起きた"反乱"により皇帝リアは『ランス』と名乗るレジスタンス陣営の筆頭に討たれたため、その第一皇子『ディザレス』が次代アンスール皇帝の座を継ぐはずであった。しかし即位直前に、アンスール帝国と技術提携を結んでいる隣国ジュリエーザ共和国に滞在していた際、視察に訪れた国営研究所で発生した爆発事故及び狙撃手(スナイパー)の襲撃により突如消息を絶ったため、急遽実姉のオフィーリアが帝国初の女帝になるという前代未聞の事態が起きた。